簡単な部品構成でタイマー回路を作成する


      今回は、機械接点型のリレーにタイマー機能を付加した”ディレイ君”を製作します。

<”ディレイ君”回路図_その1=オンディレイタイマー>
ディレイ回路図<その1> +DC=+12V

どこででも簡単に手に入る部品で構成してみました。動作原理を説明しますと・・

”SW”は閉じている=ONしている=クローズしている状態なので、”10uF”の電解コンデンサには+5Vが充電されています。
”SW”の部分の赤い丸は”普段はON=Closeしている”という意味になります。これを”Normal Close=NC”と呼びます。
SWがONしている限りはR2=100Ωの抵抗を通して”トランジスタ1=Tr1”の”B=ベース”へも電流が流れ込んでいるので、Tr1とTr2はONしています・・つまり、”C=コレクタ”から”E=エミッタ”へと電流が流れる状態になっているということです。
したがってリレーのマイナス端子からTr2を通って電流が流れるためリレーもONしているということになります。
SWをOFF=開くと+5Vの供給が断たれますが、10uFのコンデンサに蓄えられている電気がTr1のBへ流れ込むためにコンデンサのエネルギーが切れるまではリレーはON状態を維持します。
これがディレイ=タイマーの時間を作る仕組みなのです。
つまり、SWをON=閉じている間はリレーはONしており、SWをOFF=開くと一定時間後にリレーがOFFします。またSWをONすればリレーもすぐにONするということです。
信号を入れると(SWを押したり、電源を投入したり)一定時間後にリレーが動作してその状態を維持し、信号が切れると同時に元の状態へ戻るタイマーのことを、”オンディレイ”と呼びます。
ざっくりではありますが上図の回路構成では、ボリュームを100KΩに調整すると約10秒の遅延時間、200KΩに調整すると約15秒の遅延時間、500KΩに調整すると約25秒の遅延時間、1MΩに調整すると約45秒の遅延時間となります。

ディレイ君の写真
これが”ディレイ君”です。できるだけ分かりやすくお見せするために基盤を使用していません。
簡単な部品構成なので気軽に製作できます。

注意点として・・
トランジスタを2ケ使用して”ダーリントン型接続”にしてあります。このように接続することよってTrのベースに流れ込む電流値が少なくなってもリレーをONさせるだけの電流が維持できるようになるのです。
R2=100Ωは、1MΩのボリュームをいじって時間を調整する際にTr1のBに電流が流れ過ぎないようにするためのものです。
コンデンサの容量を10uFから20uFに倍増させればリレーがONするまでの遅延時間もほぼ倍になりますが(容量を5倍にすれば時間も約5倍になる)、1MΩボリュームを抵抗がもっと大きいタイプにすると動作が不安定になってしまいます。
コンデンサのエネルギーが切れるギリギリまでリレーはONしているので、遅延時間を5秒以下にすることはできません。どうしても5秒以下の遅延時間に設定したい場合はトランジスタを1ケだけにします(しかし1ケだけだと時間を長く設定しようとするとリレーがONしなくなる)。
Trベースの順方向電圧に遅延時間が依存するために常に正確な遅延時間を示しません。
リレーのプラスとマイナスの端子間にあるダイオードは向きの間違えや付け忘れは厳禁です。DCリレーにはプラスマイナスを逆に接続すると動作しないものが多いので注意します。(今回のリレーは+12Vで駆動するタイプを使用しました;+DC=+12V)


さて、タイマーリレーにはもう1つのパターンがあります。
SWをONするとリレーが即ON、一定時間後にOFFするというものです。

<”ディレイ君”回路図_その2>
ディレイ回路図<その2> +DC=+12V

<その1>とよく似た構成になっていますが、コンデンサがTrのBに対して直列に入っているところが大きな違いです。
SWも赤い丸以外に白い丸もあります。この白い丸は、普段はOFF=開いている=Openしているという意味になります。赤い丸の”Normal Close”に対して”Normal Open”=NOと呼びます。このSWは、”切り替え”を行うと今まで繋がっていた端子を外れてもう一方の端子へ繋がるという動作をするスイッチなのです。
普段、SWは0V=GND側にショートしています。SWを切り替えるとGNDから+5Vにスイッチされてコンデンサへの充電が始まります。
この充電電流がTr1のBへと流れ込んでリレーをONさせるのです。充電が完了すれば充電電流は流れなくなるのでTr1のBへの電流は断たれてリレーがOFFします。
つまり、SWを切り替えるとリレーは即ONし、一定時間後にOFFするということになります。SWを元の位置へ戻してもリレーはOFFを維持します。
信号が入力されると即リレーがONしてその状態を維持し、信号が切れてから一定時間後にリレーが元へ戻る遅延タイマーを”オフディレイ”と呼びます。

<シーケンス制御>
シーケンス制御の基本回路

これらのタイマーを組み合わせてみました。動作原理は・・
SW1を切り替えるとリレー1が一定時間ONします。するとリレー1の接点がCloseして+5Vが各部へ供給されます。
この+5Vの供給により、リレー3がONします。リレー1がON(+5Vを供給)している間にSW2を切り替えるとリレー2がONすることになります。
SW2を切り替えない場合は一定時間後にリレー1がOFF、それと同時にリレー3方面への+5Vの供給が断たれ、リレー3はタイマーモードに入り、更に一定時間後にリレー3がOFFします。
SW2を切り替えた場合はリレー2が一定時間ONすることになりますが、リレー2がONすると同時にリレー1からの電流をリレー2の接点を通してGNDへと流すためにリレー1のタイマーが切れてもリレー1はOFFせず、リレー2のOFFに合わせてリレー1もOFFするという動作になります。
これを、”リレー2を使ってリレー1を保持する”と言います。
また、リレー1とリレー2はNOとNCを持つ接点を2回路持っています。小型リレーはこの2接点タイプのものが多いのです。この回路ではもう1つの接点を使用してリレー2がONしている間はLEDが点灯するようになっています。また、リレー1がOFFすることで、リレー2遅延用の10uFコンデンサのリレー1への影響を遮断するようになっています。
リレー2が一定時間後にOFFすると同時にリレー1もOFF、するとリレー3方面への+5Vの供給が断たれるので一定時間後にリレー3がOFFすることになります。
このようにリレーの接点をスイッチの代わりとして複数のリレーを組み合わせる考え方を”シーケンス制御”と呼びます。


”ディレイ君”の各部の拡大写真です。
回路部品写真_1          回路部品写真_2


 回路部品写真_3         回路部品写真_4

部品についてですが・・
回路中のトランジスタは”2SC1815”という有名なトランジスタで、どこででも安価で手に入れることができるはずです。DCリレーは小型のタイプを使用しましたが、大きめのリレーを使用する場合にはトランジスタ=Tr2を吟味する必要があります。特にリレーの駆動電圧が低いタイプほどON時の励磁電流が多いので要注意です。
また、ボリウムは多回転タイプの方が時間の調整が行いやすいと思います(回路写真のボリウムは多回転タイプではありません)。
ダーリントン接続では、微弱な電流でもベースへ流れ込めばリレーが動作してしまいます。リレーがチャタリング(カチカチとON&OFFを繰り返す)を起こしたりする場合もあるので各部の絶縁をしっかり行う必要があります。

リレーによる制御を使いこなすことができれば色々なことができるようになります。
それに何よりも、自分が考えた回路が思い通りに動作した時は非常に気分がいいものです。


次にシーケンスの基本である”自己保持”について説明します。
リレーの”自己保持”とは、自らの接点によりリレーが駆動されている状態のことです。

自己保持回路<回路に電源が供給されるとリレーが自己保持状態となる>

回路への電源供給スイッチがONされると+5Vや+DCが供給され始めます。回路に電源が投入されると同時に、リレーはタイマー動作によって一時的にONすることになります。ON遅延時間を短かくするためにトランジスタは1ケで構成してあります。
一度でもONしてしまえば、タイマー切れによりトランジスタがOFFしても、自らの接点がONすることによりリレーが駆動し続けるというわけです。具体的には、+DCからの電流が接点を通じてSWを通りGNDへ流れるため、トランジスタに電流が流れなくなってもリレーが駆動し続けるわけです。
リレーをOFFさせるには、”SW”をOFFするか、+DCの供給を断つしかありません。
ここで、回路図中の下矢印部をスイッチやNOボタンにすれば、1プッシュでリレーを自己保持状態にする回路になります。
動作していないリレーに少しでもONする機会を与えればリレーが駆動し続けるのです。そしてこの状態を解除するためには更なる条件を必要とするということです。
ただ電源を加えればON、電源を切ればOFFする単純なリレーの動作に様々な条件を与えることができるのです。

<チャタリング防止について>

  機械式接点のリレーには”接点チャタリング”という厄介な現象が存在します。
リレーの接点がON、またはOFFした瞬間に、人間の目から見ればほんの僅かな捉えることの出来ない時間・・つまり一瞬の間に、接点から出力される電圧が激しく暴れるのです。
 回路画像  左図のような回路を組んで接点チャタリング電圧を測定してみましょう。

下部スイッチがOFF=開いている時にはICの入力ピンは100KΩを通して+5Vが供給されています。
これは、”ICの入力ピンはオープンにしてはいけない”という大原則=電圧が供給されていない(0Vですらも)状態が存在してはならないことによるものです。

スイッチがON=閉じれば、100KΩを通して+5Vから供給される電流は抵抗値の小さい1KΩを通り、そのほとんど全てがGNDへと流れてしまいます。IC入力ピン電圧は、スイッチがONすることで、+5Vから0Vに下がるわけです(流れる電流により発生する電圧は100KΩ抵抗にかかってしまう)。
チャタリング波形測定画像1
図の縦軸は電圧、横軸は時間です。緑波形のTOP部は供給電圧である+5Vになっています。横軸は1マスが0.0001秒なので、画面左から右までは10マス=0.001秒ということになります。
スイッチをOFFした瞬間、0.0005秒くらいの間に大小のピークがいくつも現れています。これが接点チャタリングです。
各ピークの横幅は大きい物で0.00015秒くらい、小さいものでは0.000005秒以下のものもあります。
これらのピークをICは、OFFからON、ONからOFFになったと認識してしまうのです。
チャタリング波形測定画像2
チャタリング波形測定画像3
左図のようにチャタリングが発生しない時もあれば、右図のように激しい暴れが続くこともあります。
チャタリング波形測定画像4
チャタリング波形測定画像5
スイッチのOFF時の接点チャタリングだけでなく、ON時にもチャタリングは発生しています。
スイッチが非常に短い間にOFF→ON→OFFする時には、特に激しい接点チャタリングが発生する場合があるようです(SWを押したと同時にすぐに離すなど)。
また、スイッチの種類によっても接点チャタリングの発生パターンが変化します。
接点チャタリングは一瞬の出来事なので他のリレーを駆動したり等に利用する分には何の問題もありませんが、ICなどの入力部へこの出力電圧を入れる場合には大問題となることがあります。
ICは非常に敏感に入力部の電圧に反応するので、この電圧の暴れ=チャタリングを、”何度も入力された”と勘違いしてしまうために予想もつかない異常事態を引き起こすのです。
ちょっとばかり電子回路理論が分かってきた素人がハマる罠と言えましょう。
PIC等のマイコンであれば、ソフト的に一定時間の入力の暴れを無視するようにプログラミングすることによりチャタリングを防止する手段もあります。しかし、ソフトウェアに手を加えることができない環境においては、ハード的なチャタリング防止が必要であり、チャタリング防止対策を行わなければ”使い物にならない”ということにまでなってしまうのです。
私が、ゲーム機に改造を加える仕事をしていた時に使っていた接点チャタリング防止回路をお見せしておきます。
<チャタリング防止回路>
チャタリング防止回路
入力部からの電圧をSwitchにより回路内へ入れると(Switchは押している時だけONになり、離すとすぐにOFFへ戻るタイプ=NOスイッチ)出力は+5Vから約0Vへ切り替わり、またすぐに+5Vに戻ります。入力部に大きい接点チャタリングが入ってきても出力の電圧は1度だけ0Vになって+5Vへ戻ります(Switchを押したままだと出力は+5Vへは戻らず、その後にSwitchをOFFするタイミングで出力が+5Vへ戻るという動作になる)。回路動作原理は後述してあります(赤字)。
チャタリング防止用の回路にはもっと簡単なものもありますが、何が起きるか分からないゲーム機に対しては確実なチャタリング防止対策が必要だったため幾分複雑な回路構成になっています。
しかし、安価でどこでも手に入れることができる部品で構成されています。そしてチャタリング防止効果は抜群です。
”ディレイ君”とともに覚えておくと、機械接点型のリレーから基盤などへ出力させる際に役に立ちます。

より正確な遅延時間タイマーリレーにするには・・・
下図の回路図は”チャタリング吸収回路”を基本としたタイマー回路です。前述のチャタリング吸収回路は、一部をボリュームに変更すれば、タイマー回路になるということなのです。
正確な遅延タイマー回路
動作原理の説明・・・トランジスタ1=Tr1のベースには1MΩボリウムを通る電流が全て流れ込み、Tr1がONした状態で安定しています。したがってTr2のベースには、10KΩを通る電流は流れ込むことはできないためにTr2はOFF状態です。
Tr2がOFFしているので、3.3KΩを通る電流はTr3のベースへ流れ込みTr3はONしているということになります。

ここで入力のSwitchが一瞬でもONされるとTr2のベースへ電流が流れ込んでTr2はONします。すると、今までの平衡状態は一気に崩れて、1MΩを通る電流は10uFコンデンサに吸い込まれてTr1がOFF、10KΩ抵抗を流れる電流はTr2を更にON状態に維持します。Switch部でチャタリングが発生しても、10KΩ抵抗から供給される電流がTr2ベースへと流れ込んでいるため、Tr2がOFFすることはありません。
やがて10uFコンデンサの放電が終わると、再びトランジスタ達は元の状態へ平衡していくというわけです。

既述のタイマー回路と異なる点は、低下していく電圧がTrベースの順方向電圧を超えてTrがOFFすることに対して、コンデンサに流れ込む電流が0になると溢れた電流がTrを動作させるということです。
電圧依存型のタイマー回路はトランジスタのベース順方向電圧に依存するため、なんらかの原因でこの順方向電圧に変化が起きてしまうと遅延時間が狂ってしまいます。
しかし、電流依存型のタイマー回路であれば、トランジスタの増幅率が変化しない限り、安定した遅延時間を維持するのです。
特に、ベースへ流れ込む電流が少ないほど増幅率は高く、しかも安定しています。
出力から後段にあるリレー駆動回路は、”反転増幅”という形でトランジスタを配置しています。
出力は、平衡時には+5Vを出力しているのでダーリントン型に配置してしまうと平衡時にリレーがON状態になってしまいます。そこで、図のようにトランジスタを配置することでTr3とTr4の動作を反転させ、出力が+5V=High信号の時にTr4がOFFするようにしているのです。

ここまではDC=直流だけでリレーを制御してきましたが・・
直流と交流を混在させるためにはどうすればいいのか?


   トライアックを使って交流を制御する・・工事中


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