≪ イ・カ・れ・た・ヤツ≫




倒れたと思うと南雲が飛び乗り銀髪に殴りかかっている

まるでサンドバッグみたく一方的に殴られ抵抗すら出来ずにいる


「…南雲…」


体が…震える…
イカれた野郎に襲われた恐怖なんかじゃない…

初めて思った…




南雲…こわい…




恐ろしい形相で返り血を浴びグッタリとした相手を更に殴りかかるその姿に…まじで恐怖した…


「南雲!!もうやめろ!死んじまうぞ」


英祐が止めに入るが…俺は…動けずにいた…


「南雲!冷静になれよ」


英祐の言葉にハッとしたのか…ようやく殴るのをやめ相手から離れた

興奮が冷めず物凄い形相のまま俺に振り向くけど……恐くて足が震える…



「桐野…」



一言声を発するけど…こわい…すごく……

まるで蛇に睨まれたカエルのように動けずただ立ち尽くしていた…


「桐野…大丈夫か?」


俺に近寄り肩に手を置いた…

たぶん…震えていたのを感じたのかもしれない…
すぐに手を離して顔を背けた…




「くくっ…アハハハ!!」




突然銀髪野郎が笑い始めた…
死んだのかと思うくらい殴られてたのに…コイツ…最後までイカれてるぜ…


「行こう…翔平」


固まっている俺に英祐が声を掛けその不気味な笑い声を背に車へと戻っていった




先にワゴンに乗る南雲の後をピタリとついていく…

一番後ろの窓際に座るコイツの隣の席を空かさずキープするとみんなが不思議そうに見ていた…



…もちろん南雲も…



別にどう思われようといいし深い意味もない!
近寄るのさえ怖かったのも事実だ!

たまに見せる優しい表情に慣れてたのかもしれない…裏腹な恐ろしい形相の南雲がすげぇ怖かった…


ただ…



…ただ……なぜか今だけはどうしても離れたくなかった…



「…南雲…血…ついてる」

「…あぁ…」


そういってハンカチを渡した…


「…俺にはあんな目……向けんなよな…」


少し俯いてそう言うとふっと微笑んで小さく囁いた


「お前がもうユキちゃんって言わなきゃな」

「…ん…言わねぇ…ぜったい…」


それだけ会話すると後は黙って座っていた…
車が出発すると鼓動のように揺れる振動で心地よく眠気が襲ってくる


色々あったからな…少しだけ目…閉じよう




…ほんの少しだけ…







ここは夢の中…


女の子と南雲の声がする


「クスクス…翔平くん可愛い…南雲くんに寄り掛かって寝てる」

「うぜーんだよ!」


そうこれは夢の中の会話だ!俺が南雲なんかに寄り掛かって寝る訳がないっ!


「ムニャ…ざけんな…ユキちゃん…」

「コノヤロ…言わねぇって言ったから夢ん中で言ってやがる」


まったく…夢の中でも南雲は怒ってんだから…
でも心地いい…南雲の肩枕…
まっ夢の中なんだからこのまま甘えちゃっていいよな…



「………な…ぐも…」

「………。」



夢の中の南雲が肩に深く寄り掛かからせるように俺の頭を抱いて肩に引き寄せてきた…

俺もされるがままに頭を寄せるとさらに深い眠りに落ちていった…

ハード過ぎた今回の週末…
でも…少しだけ南雲への気持ちが変わったような気がした…




………気がしただけだけどな…。

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